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 dlmの使い方


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Rのdlmパッケージを用いて、動的線形モデル(正規線形状態空間モデル)を推定する方法を書きます。

状態空間モデル関連のページ
  状態空間モデル       状態空間モデルのことはじめ 
   dlmの使い方          Rで正規線形状態空間モデルを当てはめる
  ロー カルレベルモデル   dlmパッケージを使ってローカルレベルモデルを当てはめる
  季節とトレンド        dlmパッケージを使って季節成分とトレンドの入ったモデルを作る
 

                                      作成日  2012年 8月 8日 
                                       最終更新 2012年 8月 8日

状態空間モデル推定の流れ

状態空間モデルの細かい理屈は、実例を見せなが ら説明します。
  そのまえに、どうやって状態空間モデルをRで推定するのかを説明します。

Step1 状態空間モデルの「型」を決める
  Step2 その「型」にいれるパラメタを推定する
  Step3 Step2で推定されたパラメタを「型」に入れてカルマンフィルターを回す
  Step4 カルマンフィルターの結果を使ってスムージングする

Step4の「スムージング」はまだ説明してま せんが、下のほうで説明します。”予測”だけを目的とするならばなくてもいいかもしれませんが。

この流れは、dlmパッケージだけではなく KFASパッケージという状態空間モデルを推定できる別のパッケージを使っても、大体同じ流れになると思います。

Step 1状態空間モデルの「型」を決める

「型」というのは私の造語なのですが、その心は わかっていただけるんじゃないのかなと思います。

状態空間モデルにはいろいろな「型」がありま す。
  状態空間モデルが表す「状態」の変化のパタンがたくさんあるということです。また、「状態」から「観測値」へと変換されるプロセスにもいろいろなもの が考えられます。まずはその「型」を決めるところから始まります。

「型」 の決め方は、対象に対してもともと持っていた知見を用いるというものになります。たとえば、2000年に資源量が低位だったら、 2001年に突然高位になるということはたぶんないだろうなというのが経験上わかっていたとします。2001年にいったん中位になってから2002年くら いに高位になるだろうなと。こういう知識があると「資源量は一気には変化しない」けれども「緩やかな変化が続けば、かなり多い値にも低い値にも上下する」 という状態の変化のパタンを設定してやればよいということになります。

この「型」が決まらなければ、ここから先には進 めません。ここが最も頭を使うところなのかもしれません。

いろいろな「型」については実例を取り上げなが ら主に次のページ以降で説明します。

dlmパッケージだと、dlmModPoly( ) とか dlmModReg( ) とかいろいろな「型」が用意されているので簡単に「型」を設定することができます。また、これらの「型」はたとえば
dlmModPoly( ) + dlmModSeas( ) みたいに結合させることができます。 
これはRならではのお手軽さですね。WinBUGS使うとこうはいきません

型の一覧を書いておきます。今の段階でこれらの 型の意味を理解する必要はありません。
  次のページから実例を挙げて順にみていきます。

dlmModPoly( ) 
order=1ならローカルレベルモデル(ランダムウォーク プラス ノイズモデル)
order=2ならローカル線形トレンドモデルを組むことができます。

dlmModReg( )
回帰分析のようにほかの説明変数の影響を加えられます。たとえば気温が高くなるとビールがよく売れるとかいうのを説明するために「気温」という説明変数を 導入したりとか。

dlmModSeas( )
季節変動を入れたモデルを組むことができます。

dlmModtrig( )
周期的な変動を入れたモデルを組むことができます。 dlmModSeasと違って三角関数(サインとかコサインとかいうやつら)をつかって周期的な変動 を表します。

dlmModARMA( )
状態空間モデルを使ってARMAモデルを推定することができます。

Step 2パラメタを推定する 最尤法

 適当なパラメタを設定してやってdlmパッケージに突っ込んでやればものの1秒もかからずカルマンフィルターを使って状態空間モデルが推定できて しまいます。
 そこで、その前段階にあたるパラメタの推定方法が、われわれエンドユーザー側として重要になる知識の一つなんじゃないかと思います。

パラメタの推定方法にはいろいろあるんですが、ここでは「最尤法」について説明します。

最尤法とは
 パラメタA を使った時、「今手持ちのデータ」が再現できる確率は30%
 パラメタB を使った時、「今手持ちのデータ」が再現できる確率は10%
であったときに、パラメタAを採用する、という考え方です。なぜならば、パラメタAのほうが「今手持ちのデータが再現できる確率」が高いからです。このよ うに、「今手持ちのデータが再現できる確率」が最も高いパラメタを採用するのが最尤法です。

 たとえば、コインを二回だけ投げて結果が「表・裏」だったとします。このコインの「表が出る確率」というパラメタは一体いくつが妥当だと思います か?

仮説1 パラメタは 1/3 だ!
仮説1を採用した時に「表・裏」という「今手持ちのデータ」が得られる確率は
1/3 × 2/3 = 2/9

仮説2 パラメタは 1/2 だ!
仮説1を採用した時に「表・裏」という「今手持ちのデータ」が得られる確率は
1/2 × 1/2 = 1/4

2/9 < 1/4 より、仮説2を採用した方が「今手持ちのデータ」が再現できる確率が高い
⇒仮説2「表が出る確率は1/2」を採用する
という流れが最尤法です。

 暇な人は調べてみるといいと思いますが、この場合「今手持ちのデータが再現できる確率」が最も高くなるのはパラメタが1/2のときになります(微 分使えば解けます)。
 このように「今手持ちのデータが再現できる確率」が最も高いパラメタが最も尤もらしい(「もっともらしい」と読みます)と考えて、そいつを採用するのが 最尤法です。

「今手持ちのデータが再現できる確率」のことを「尤度(ゆうど)」といいます。計算の簡単のため対数を取った対数尤度を使うことが多いです。
 今までの話は、対数尤度が最も高くなる「最大化対数尤度」を得ることができるパラメタを推定する、とカッコよく言い直すとこうなります。

 状態空間モデルにこれを適応します。
 まず「テキトーな」パラメタをつかってカルマンフィルターをしてやり状態空間モデルを推定します。
 そしてそのときの「今手持ちのデータが再現できる確率」を計算してやります。
 その「今手持ちのデータが再現できる確率」が最も高くなるようにパラメタを変更してやって、最も尤もらしいパラメタを見つけます。
 そして、またそのパラメタを使って状態空間モデルを推定しなおしてやれば、最も尤もらしい状態空間モデルが出来上がります。

dlmMLE( ) という関数を使えば簡単に最尤法が適用できます。
じつはこの関数は有名な最適化関数optim( )をそのまま使っています。なのでoptimで使われる匠の技(?)的なパラメタ推定方法がそのまま使えます。技術的な話は実例を挙げながら次のページで 説明します。

Step 3 カルマンフィルターする

dlmFilter( 使うデータ, モデルの型 ) で簡単にカルマンフィルターができます。

計算するだけなら一瞬です。

Step 4 スムージングする

そもそも「スムージング」とはなにか、まだ説明していなかったのでここに書きます。

 まず、2000年のデータから2001年状態を予測して、そして予測された状態を、2001年の観測値をもとにして補正しました。このように補正 するのがフィルタリングでした。前のページに書いた内容ですね。
 一方のスムージングは、2002年、2003、2004年の観測値を使って2001年の補正をします。
 別に3年あととかはどうでもよくって、「将来の値をもとにして過去の状態を補正する」のがスムージングの心です。
 将来の値なんてわからないんだからやったって無駄じゃんと思うかもしれませんが、今手持ちのデータすべてを使って過去を説明できるんですから、知識発見 という意味合いでは便利です。

dlmSmooth(フィルタリングしたやつ) で簡単に計算できます。これも1行ですね。

実践 dlm

 dlmしてみます。
 細かい話は次のページ以降で説明するとして、まずはモデルを推定する流れをつかんでもらう程度の中身にします。
  すべてまとめたスクリプトはこ ちらにおいておきます。これはPetris and Petron (2011)を一部改訂したものです。

まず、Nileというデータを使うことにします。これはRにデフォルトで入ってるデータです。

> Nile
Time Series:
Start = 1871
End = 1970
Frequency = 1
  [1] 1120 1160  963 1210 1160 1160  813 1230 1370 1140  995  935 1110  994
 [15] 1020  960 1180  799  958 1140 1100 1210 1150 1250 1260 1220 1030 1100
 [29]  774  840  874  694  940  833  701  916  692 1020 1050  969  831  726
 [43]  456  824  702 1120 1100  832  764  821  768  845  864  862  698  845
 [57]  744  796 1040  759  781  865  845  944  984  897  822 1010  771  676
 [71]  649  846  812  742  801 1040  860  874  848  890  744  749  838 1050
 [85]  918  986  797  923  975  815 1020  906  901 1170  912  746  919  718
 [99]  714  740

1871年から1970年までのナイル川の流量データです。ちょうど100年間分のデータです。

plot(Nile,type="o",col=8,ylab="",main="Nile")

Nile


Step1から順番にモデルを推定していきます。

 Step1 状態空間モデルの「型」を決める
build.1<-function(theta){
    dlmModPoly(order=1,dV=exp(theta[1]),dW=exp(theta[2]))
}
今回は dlmModPoly(order=1ということで、ローカルレベルモデル を推定します。ローカルレベルモデルとは何者かということは次のページで説明します。とりあえず簡単なモデルです。

  ここで function(theta)とかいう変なものがついています が、これは自分で関数を作るということを表しています。thetaというパラメタを入れるとdlmModPoly関 数を使って独りでにモデルを作ってくれるという関数を作ったんですね。
 こういう風にいったん型を関数にまとめてしまってからパラメタ推定に移ります。optim関数を知っている人はすんなり納得しやすいような気はします。
 今回推定するのは、二つの分散です。一つは観測誤差の大きさ。もう一つは状態そのものが変動するその大きさです。こうやって「状態そのものが変動してい る」のと「観測誤差が入っている」という両方の変動を加味してモデルを組みます。exp()が ついているのは、分散の大きさが絶対正の値になるからその指定のためです。expとは指数ですね。eの何とか乗という値は決して負になりません。

  Step2 その「型」にいれるパラメタを推定する
  fit.1<-dlmMLE(Nile,parm=c(1,1),build.1)
  fit.1
$par
[1] 9.622439 7.291970

$value
[1] 549.6918

$counts
function gradient
      29       29

$convergence
[1] 0

$message
[1] "CONVERGENCE: REL_REDUCTION_OF_F <= FACTR*EPSMCH"

 これは実質1行で計算できるので楽ですね。dlmMLE(Nile,parm=c(1,1),build.1)を してやるだけです。推定するパラメタが二つあるのでparm=c(1,1)という風 に二つ初期値をテキトーに入れてやると勝手に計算してくれます。

推定されたパラメタを使ってモデルを組みなおします。太字は私が勝手に入れました。

 mod.Nile<-build.1(fit.1$par)
> mod.Nile
$FF
     [,1]
[1,]    1

$V
         [,1]
[1,] 15099.75

$GG
     [,1]
[1,]    1

$W
         [,1]
[1,] 1468.459

$m0
[1] 0

$C0
      [,1]
[1,] 1e+07

 なんだか怪しげなパラメタがたくさん出てきましたが、FFとかGGとかいうのは”推定されたパラメタ”ではありません。モデルの「型」を作るため の構成要素です。 今回は説明しませんが、じつはdlmModなんとかっていう関数を使わなくても、このFFだのGGだのを指定してやれば自分で何でも自 由にモデルを組むことができます。行列の掛け算とかがわかる方は、参考文献の数式を見るとFFやGGの意味がすぐ分かると思います。今回は省略します。
 とりあえず今回大事なのは VとW です。Vは観測誤差の大きさ(分散)を表していて、Wは状態の変動の大きさ(プロセスエラーの分散)です。 Wより Vのほうが大きくて、観測誤差のほうが大きいということがわかります。

Step3 Step2で推定されたパラメタを「型」に入れてカルマンフィルターを回す
  NileFilt<-dlmFilter(Nile,mod.Nile)
ここまで来ると後は楽です。一行でカルマンフィルターが完了して、モデルが出来上がりました
dlmFilterにデータであるNileと出来上がったモデルの型mod.Nileを 入れればできます。

  Step4 カルマンフィルターの結果を使ってスムージングする
  NileSmooth<-dlmSmooth(NileFilt)
スムージングも一行で完了。dlmSmoothにフィルタリングした結果であるとこ ろのNileFiltを入れればできます。

結果
中身は示しませんが、推定された「状態」を表示させるには以下を実行すればよいです。
NileFilt$m                    # カルマンフィルターで推定された状態
NileSmooth$s                # スムージングされた結果

 結果をプロットします。まずはカルマンフィルターの結果です。dropFirstと は一番最初の値を取り除く処理です。なぜこれが必要なのかを説明するとまた1章分くらい文章を消費しちゃうので後回しにします。

plot(Nile,type="o",col=8,ylab="",main="Nile Filtering")
lines(dropFirst(NileFilt$m),col=2,lwd=2)

Nile Filt


次はスムージングした結果です。こっちのほうが滑らかになってますね。
> plot(Nile,type="o",col=8,ylab="",main="Nile Smoothing")
> lines(dropFirst(NileSmooth$s),col=4,lwd=2)

Nile Smooth


 ここで引っ張った線はナイル川の流量の見えない「状態」を表しています。毎年よくわからない観測誤差が入ったモノを私たちは観測しているんだけれ ども、その見えない流量の水準はいったいいくらかというのを推定したら赤い線とか青い線とかになるわけです。
 で、1920年の流量の見えない「状態」を1920年までの観測結果から推定したのが赤い線(フィルタリングの結果)で、手持ちの100年間のデー タすべてをフルに使って状態を推定したのが青い線(スムージング)の結果となります。

 これでとりあえず状態空間モデルを一通り回すという作業ができたことになります。
 次のページからはこの状態空間モデルの内容をもうちょっと掘り下げていきます。



 バグや誤り等ございましたら、掲示板などにご一報ください。

参考文献

[1] J.J.Fコマンダー、S.Jクープマン 和合肇 訳: 状態空間時系列分析入門,2008

[2] G,Petris and  S Petrone: State Space Models in R, 2011 (Journal of Statistical Software)

[3] G,Petris, S Petrone, P Campagnoli: Dynamic Linear Models with R, 2009

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